僕は「非上場企業」と「未上場企業」を明確に分けている。上場の意思の有無だ。上場の意思があって「未だ上場していない企業」が未上場企業であって、うちは上場する気がないので「非上場企業」。上場準備中の会社の業績開示のリスクなどについては全く土地勘もなくわからないのでここでは除外するものとして。
僕は業績は社内に開示すべきだと考えている。売上だけでなく営利も含め、年次だけでなく可能なら月次、最低でも四半期で。というか業績だけでなく社内情報は可能な限り開示した方が良い。開示してはいけない情報は、バイネームの人事情報・コアな財務情報・機密に当たるクライアント情報など最低限にとどめるべき。
情報開示のデメリットはこんなところだろうか。
(1)開示のための情報がそもそも揃っていない場合、整えるのに時間やコストがかかる
(2)開示した情報を読み解くにはリテラシーも必要で、これが足りないと情報が一人歩きして悪い認識を生むことも
(3)業績不振の時の業績情報、離職率が高まっている時の組織関連の情報など、経営不振に繋がりやすい情報も多い
従業員に「経営者目線」を求める経営者も多いが、当然ながら経営者目線は経営者にならないと育たない(多くの経営者は経営をやる前の自分が経営者目線を持っていたか振り返ってみると良いと思う)。経営者と従業員を隔てる壁は、情報・リテラシー・結果責任・説明責任の4つ。情報とそれを読み解くリテラシーがなければ経営者目線が育つ理由がない。経営成績に対する結果責任がなければそれらを活用する理由が本人に備わらない。さらに、僕は経営者と従業員の責任の違いは「結果責任」よりは「説明責任」にあると考えている。結果責任は究極自分の給料に影響する程度だが、顧客・株主・従業員などさまざまなステークホルダーへの説明責任は結果責任に勝るプレッシャーを与えることが多い。
経営者目線を育む重要な一手が情報開示。上記4つの前半2つをクリアするためにこの心理ハードルを経営者がクリアすることはめちゃくちゃ重要。
情報開示にはかなりコストがかかる一方、開示しても開示してもそのリターンを感じられることは少ない。が、情報が閉じられている会社で働いている人の話を聞くと、本当の信頼関係が経営・現場の間で作られることは難しそうに感じる。秘密の多い人間は魅力的に映るが近くで付き合うのは不安が付きまとう。会社と従業員の間にはどうしてもパワーギャップが生まれるもので、パワーのある会社に秘密が多いことは従業員に不安を生んでしまうのは仕方がない。
手元の情報を手掛かりに、自分の頭で一生懸命考えて活動を始める従業員も必ず出る。行動を変える人は一部に過ぎないし、その中でさらに筋が良い人はその一部。全員に同じような行動変容を求めるのは難しい。でも必ず一部の活動には変化が生まれる。それでいいんじゃないか。組織は常にトップアップであるべきで、1割の人材が残りの9割を動かす構造だ。
情報は一度開示すると、よほどの理由がない限りクローズに戻すことはできない。非上場企業の経営者はいくらでも会社を私物化できるが、「隠す」というオプションを自分に封じることは、より良い会社を作り従業員に説明責任を果たしていくという、経営者の本質的な成長の第一歩になるのではないだろうか。
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