人事の打ち手で業績を上げようとする際、経営者や事業責任者の多くは採用or育成の2択で考える。
しかし、例えば採用は採用の意思決定をしてから実際にそのポストに人材を充てられるまで軽く3〜4ヶ月、下手すれば半年以上かかる。募集要項作成→応募獲得→選考→内定→退職交渉→入社とプロセスがそこそこ長い。さらに、入社後にもオンボーディング期間がそこそこあること、そもそも中途採用の成功確率はあまり高くないことを考えると、1年経っても採用では期待した通りの成果を得られないなんてことも十分想定される。そして育成はそれ以上に時間がかかるのは言うまでもない。
30名以上の会社であれば、最初に考えたいのは配置だ。人の能力というのは本当にアテにならない。人との相性・仕事との相性でそのパフォーマンスはいくらでも変わる。上司との人間的な相性(上司のマネジメントスキルや好みの問題も大いに含む)を見直したり、弱みの克服よりも強みの活用で十分成果が出る仕事にアサインしたり、それだけで劇的に成果が変わることが多い。
このため、多くの会社で主力職種となる営業職についてはチームを小分けにしておくのが良い。1人の営業課長が10人をマネジメントしている、という状態はあまり好ましくなく、3人・3人・4人の3チームに分けてそれぞれに課長をおく方が良い。相性が悪いと判断したらすぐに異動させられるからだ。また、50名を超える会社の場合、営業事務などのサポーティブな仕事や横断的な価値発揮をする仕事(部署)も作って置けると良い。フロントで矢面に立つ仕事では能力を発揮できなかった人間が、支援業務や改善業務で成果を上げるということもよくある。職種間を跨ぐ異動も、「負け」としない風潮ができると良い。
さらに即効性のある打ち手はイグジットマネジメントだ。誰か一人がいなくなるだけでチームの生産性が劇的に上がるということはままある。その際、イグジットの対象となるのは成果の小さい社員ではない。周囲に気を遣わせ、士気を下げ、コミュニケーションを複雑にする社員だ。こうした社員は、成果は中の上かそれ以上にあげていることもあるが、「この人と組みたくない」「この人にはあの手の情報は入れない方がいい」「この人をどう処遇するか他のメンバーと相談しなくては」「あれをやるとこの人が文句を言うに違いない」と、とにかくコミュニケーションの生産性を下げる人物というのが一定の割合で存在する。さらにそうした人物が管理職やリーダー職にについている場合は最悪(これもよくある)。こうした人物の退職により劇的にチームの生産性が上がることになる。
日本の会社は社員をクビにできない、とはよく言うが、しっかり話し合って穏便に会社を離れてもらうことができるならそれに越したことはない。また、即効性というこの記事の趣旨には沿わないが、そもそも不適切な社員が辞められることで組織の純度を保つ仕組みは会社にあった方が良い。就業規則や何らかのルールということではない。成果を上げているかどうかに関わらず、組織を傷める人物は評価をしないという経営陣の鉄の意思と人事処遇の方針だ。こうした処遇は組織に蓄積され、良くも悪くも必ず業績につながる。
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